グランピングは、ここ数年で注目されるようになった新しいアウトドアのスタイル。キャンプが主流だったアウトドアシーンに新たな風を吹き込んだと言えるでしょう。
各メディアが注目して取り上げたこともあって、グランピングという言葉は多くの人の知るところとなり、個性あふれるグランピング施設が日本全国あちこちに登場しています。
しかしグランピングはそもそもいつどこで始まったのでしょうか。その詳細は意外にもあまり知られていないようです。
そこで今回は日本よりも少し先を行く海外のグランピング事情にも目を向けながら、グランピングの歴史を紐解き、なぜグランピングが人気なのかについてお話します。
グランピングとは、「優雅な」「魅力的な」といった意味の”glamorous”と”camping”を合わせた造語というのは、ご存知の人も多いのではないでしょうか?
グランピングは一言でいうと、「アウトドアをリゾート感覚で快適に楽しむキャンプの新スタイル」と言えるでしょう。つまりテントを設営して大自然を満喫するというより、新緑や青い海、桜や紅葉といった美しい景観を望む快適でラグジュアリーな施設に宿泊し、食事も一流シェフが提案するアウトドア料理を味わうというのが、日本でよく見られるグランピングのスタイルとなっています。
ただ最近は、会社帰りにふらっと立ち寄れるようなグランピング施設が大都会の真ん中に登場するなど、グランピングは多種多様に進化しています。
今や全世界で注目を集めているグランピングですが、そもそもグランピングはいつの時代からあったのでしょうか。そのルーツは諸説ありますが、ここでは一般的に語られている歴史をご紹介します。
グランピング施設にある様々な形状のテント。テント内にベッドやテーブルなどの家具が置かれている様は、モンゴルの遊牧民が暮らすパオ(モンゴル語でゲル)を思わせます。パオは家畜とともに草原を移動して生活する遊牧民が住む移動式住宅。一見テントのような家の中に家具を置いて生活するスタイルがグランピングのルーツではないかと言われています
グランピングのルーツについては諸説ある中、もうひとつが1900年代のヨーロッパを起源とする説。1900年代といえば、イギリスを中心に産業革命が起こって人々が豊かになり、ヨーロッパの列強が世界中に植民地を広げていった時代でした。工業化により多くの収入と余暇を手にしたヨーロッパのお金持ちは、休日を楽しむべく、こぞって郊外へ出かけるようになりました。
こうしたセレブたちの動きに呼応するかのように、19世紀半ばには、世界的ブランドである「ルイ・ヴィトン」が誕生。やがてヨーロッパの貴族たちは、鉄道や船の旅に最適なルイ・ヴィトンの平らな大型トランクに生活必需品や洋服をつめ、植民地であるアジアやアフリカ諸国を旅するように。時には狩猟や探検と称して贅沢なキャンプをしていました。キャンプと言っても、テントには豪華な家具や調度品が置かれ、実に快適な空間だったとか。もちろん料理も自分で作るのではなく、シェフを呼び豪華な食事を用意させたそうです。
当時は富裕層の人たちにしかできなかった贅沢な体験が、今はグランピングとして、一般の人にも広く楽しめるようになったのです。
さて現代に目を向けてみましょう。
Googleトレンドのデータによると、「グランピング」というキーワードが検索されはじめたのは、2007年のイギリス、アイルランドでのこと。「グランピング」という言葉が実際に使われはじめたのは、そこからさかのぼることさらに2年。2005年頃のイギリスとされています。
グランピングはイギリスで人気を博し、ロンドン郊外を中心に250を超えるスポットが展開されるように。その多くは、田園が広がる農村地帯にあり、小型の小屋やモンゴルのパオのようなテント、荷馬車を利用した簡易な宿泊施設で、郊外ならではののんびりとした雰囲気が楽しめるようになっています。
イギリスで生まれたグランピングは、フランスやスイス、アメリカなど、欧米を中心に急速に人気が高まっていきました。
歴史を見ても、グランピングはもともと欧米を中心に普及したラグジュアリーな旅行だということが分かりましたが、日本ではいつごろからグランピングという言葉が認知され、そのスタイルが広がっていったのでしょうか?
海外で普及していたグランピングの概念が日本に知られるようになったのは2010年頃。グランピングという今までにない新しいアウトドアスタイルが紹介され、一般的に認知されるようになったのは2015年のことです。
グランピングの名をつけた施設が開業したことが話題となり、一大ブームのきっかけに。そこから一気に人気に火が付きました。森の中のキャビンで自然を満喫するスタイルは、当時大きな話題となって、数多くのメディアに取り上げられるように。その後は、グランピングを名乗るさまざまな施設が次々と全国各地で展開されていきました。
現在はグランピングと言ってもその形態は実にさまざま。自然に触れるという本来のグランピングを追求した施設がつくられていく一方、簡易なコテージ風の建物が敷地の中にいくつか並んでいるようなキャンプ場とさほど変わらないような施設やアウトドアでバーベキューができる飲食店の延長のような施設、大型商業施設に隣接するような立地の施設でもグランピングとされているのが実情です。中には、ホテルのような建物内での宿泊がグランピングに含められているケースも。
こうした日本におけるグランピングは、海外のグランピングや”glamorous”な”camping”という概念とは異なる印象を受けますが、家族連れや友人、恋人同士といった幅広い利用者をターゲットにしつつ、グランピングを日本独自に解釈した結果、日本ならではの個性的なグランピングがさまざまな形で進化していったのではないでしょうか。
訪れた土地の自然や文化に触れることは旅をする醍醐味の一つ。特に都会の喧騒から離れて、大自然の中に身を置くと心身ともに癒されます。ただ自分でテントを設営し、料理も自炊となるとハードルが高いと感じる人は多いのではないでしょうか。そんな人にとって、慣れないテント設営や面倒な火おこしなどの手間が不要で、かつ自然を感じるラグジュアリーな空間で過ごせるグランピングはアウトドアへの入口として最適なのです。
またグランピングでは食も重視され、その土地ならではの山海の幸が盛り込まれた高級感のあるBBQをはじめ、薪ストーブやダッチオーブンなどを使った非日常感のある料理など、普段は味わえないごちそうが味わえるのも人気の理由となっています。
ブーム到来後、日本でアウトドアの新定番となったグランピングには、実に長い歴史があり、その概念も海外や日本で共通する点もあれば、日本独自の解釈で進化している部分があります。
以下にグランピングとは何か、そのルーツや歴史についてまとめてみました。
・グランピングとは、「優雅な」「魅力的な」といった意味の”glamorous”と”camping”を合わせた造語。
・グランピングのルーツはモンゴルの遊牧民が暮らす移動式住宅・パオにあると言われ、また昔の裕福な欧米人が自分たちの植民地であるアジアやアフリカ諸国で楽しんだキャンプスタイルにも通じている。
・グランピングというキーワードを生んだのは2005年のイギリスとされている。また日本では2015年にグランピングの名をつけた施設の開業が話題になり、ブームのきっかけに。
・グランピングは、慣れないテント設営や面倒な火おこしをすることなくアウトドアが楽しめ、かつラグジュアリーな空間で過ごせるという快適さを合わせ持っていることが人気の理由となっている。
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